蓄電池は趣味
太陽光発電でつくった電気を蓄電池に溜めて、夜間に使用する。
これで太陽光発電の電気だけで、家の電気を全て賄う。
完全にエコな住宅の完成です。
予算を度外視すれば・・・。
今回は、そんな蓄電池の話をしたいと思います。
蓄電池の価格
パナソニック製蓄電池
パナソニックの価格を参考にします。
メーカー希望小売価格の半額にすれば、だいたい末端の購入価格になります。
蓄電池の撤去費用
蓄電池にも撤去費用が掛かります。
2023年の時点でも処理費用は15万円程度かかるようです。
もちろん、撤去の際の電気工事、処理工場までの運搬費なども別途で掛かります。
一般家庭の消費電力
オール電化の家庭の1日の電気消費量は22kWh
東京電力では、オール電化家庭の平均電気使用量は年間7,920kWh程度と言われています。
年間7,920kWhということは、1日あたり22kWhという計算になります。
家の電気を全て賄うために必要な蓄電池の容量は?
必ずしも、22kWhのサイズの蓄電池は必要ありません。
日中は太陽光発電の電気をそのまま使用すれば良いのです。
太陽が沈んでから、蓄電池の電気を使います。
一般的に日中に使用する電気は1日のうち30%程度と言われています。
よって、蓄電池に必要な容量は家で消費する電力の70%程度となります。
家の電気を全て賄うために必要な蓄電池の容量は22kWhの70%ですので約15kWhとなります。
蓄電池15kWhっていくら?
パナソニックの蓄電池でいうと、1台で15kwhの容量を満たす製品はないですね。
いくつかの製品を組み合わせて合計で15kwhにする形になります。
15kwhくらいの蓄電シシテムにしようとすると、合計で568万円もかかります。
ものすごい金額ですね。
太陽光パネルと蓄電池のライフサイクルは異なる
太陽光発電と蓄電池はセットで考える人がほとんどですので、その前提で話します。
経年劣化
太陽光パネルの発電量は年々、経年劣化により発電量が低下していきます。
蓄電池で蓄積できる電力量も、年々減少していきます。
寿命はそれぞれ違う
蓄電池の寿命は10年〜15年と言われています。
長い製品でも20年程度と言われています。
一方、太陽光パネルの寿命は30年〜40年とも言われています。
相乗効果が発揮されるのは同時に存在する期間のみ
太陽光発電と蓄電池の寿命は同じタイミングに来るわけではないですよね。
10年〜15年後、仮に先に蓄電池の寿命が来たとしましょう。
その時点では、太陽光パネルは発電する状態だったので、蓄電池を買い換えたとします。
今度は、太陽光パネルの寿命がきてしまったら、どうなるでしょうか。
蓄電池に溜める電気は電力会社から買うしかありません。
複数の設備の相乗効果というのは、それぞれの設備が全く同じライフサイクルでなければ、相乗効果が発揮されません。
太陽光発電と蓄電池の相乗効果は、期間限定の話です。
日本の気候と蓄電池
一年を通して、電気の使い方は一定ではない
皆さん、過ごしやすい気温の春や秋は、自宅でエアコンはつけていますでしょうか。
エアコンはつけずに、窓を開けて過ごしているのではないでしょうか。
夏はエアコンで冷房をつけていますよね。
冬はエアコンで暖房をつけたり、床暖房をつけたりしていますよね。
季節によって、使用する電気の総量が異なります。
一年を通して、太陽光パネルの発電量は一定ではない
太陽の日照時間は、毎年、だいたい決まっています。
太陽の日照時間は夏は長く、冬は短くなります。
問題は冬ですね。
日照時間は短くなるのに、暖房で使う電力はたくさん必要とします。
過剰な設備投資にならざるを得ない
発電量の低い冬に、大量の電気を蓄積するためには、大きな太陽光パネルを設置しないといけません。
年劣化も考慮すると、さらに大きなものを初期に設置しておかなければなりません。
ただ、そうすると、あまり電気を消費しない月々において、設備が無駄になってしまいます。
宝のもち腐れです。
結果的に、太陽光発電と蓄電池だけで、家の電気を全て賄うというのは、過剰な設備投資にならざるを得ません。
まさに、贅沢の極みです。
じゃあ、小さめの蓄電池なら・・・
こういうことを言う人が必ず現れます。
計算してみましょう。
蓄電池のメリットを最大限に活かせる
容量の小さい蓄電池であれば、昼間に蓄積した電気は、夜間にて完全に自家消費できるでしょう。
蓄電池のメリットをMAXに享受できます。
5kWhの蓄電池で、どれくらいのメリットか?
例えばですが、5kWhの蓄電池を考えた時に、どれくらいのメリットが出るでしょうか。
シンプルに「太陽光発電で5kWhの電気を蓄積し、それを夜間に使い切る」という生活を想定しましょう。
1日あたり5kWhの節電効果、1年あたり1,825kWhの節電効果です。
現在の電気代を仮に36円/kWhとしたと仮定すると、1年間で65,700円の節電効果です。
ちょっと待って、雨の日もあります
ここで考慮しないといけないのは、雨の日は発電量が下がって、MAXに蓄電されない日もあるということです。
一般的に、1年間に雨の日は50日程度とされています。
よって、蓄電池に電気を溜めることのできる日は315日程度になってしまいます。
現在の電気代を仮に36円/kWhとしたと仮定して、雨の日も考慮すると、1年間で55,000円の節電効果です。
導入費用 + 撤去費用 > 節電効果
結論から言うと、撤去費用を考慮すれば、マイナスになるでしょう。
- 蓄電池 5kWh
- 導入費用 85万円
- 撤去費用 25万円(取り外し、運搬、処理費用)
設置費用 + 撤去費用 = 110万円
蓄電池の経年劣化で15年で70%まで劣化する仮定で計算すると、節電効果は以下のとおりです。
節電効果 = 68万円
蓄電池のコスパは悪いと言わざるを得ません。
まとめ 蓄電池は趣味
太陽光パネルと蓄電池をセットで導入した場合の経済メリットについてまとめます。
- 蓄電池そのものの値段が高い
- 太陽光パネルと蓄電池のライフサイクルは異なるので相乗効果は期間限定になる
- 春夏秋冬のある日本の気候で家の電気を全て賄うというのは過剰投資になってしまう
- 小さい蓄電池を導入してもコスパは悪い
それでも、災害時には蓄電池があることのメリットが大きいではないか。
確かに災害時に蓄電池は心強い設備です。
でも、災害時、ライフラインの中で電気の復旧は最も早いのです。
熊本地震では5日間で停電が解消しています。
水や非常食やカセットコンロ等を平時に備えておけば、数日間は耐えられるでしょう。
そう考えたら、蓄電池を入れるのは趣味だなと思っています。