令和4年2月24日 ロシアのウクライナ侵攻

ロシアのウクライナ侵攻、これまでの流れ

本記事の執筆時点(10月14日まで)を記載します。

戦況の変化

2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始から6月12日までの詳しい戦況については、「膠着状態」に陥るまでが非常に見やすかったです。

上記のサイトから参考までにいくつかの写真を載せておきます。

政治的イベントの時系列

  • 2014年3月 ロシア軍がクリミア半島を掌握し、住民投票を経てロシアに併合
  • 2014年3月以降 ウクライナ東部にて、ウクライナ正規軍とロシア系住民が内戦状態
  • 2022年2月10日 ロシアはウクライナ国境にロシア軍兵士10万人以上を派遣
  • 2022年2月24日 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始
  • 2022年2月25日 国連安全保障理事会でロシア非難決議を採決、ロシアが拒否権行使
  • 2022年2月25日 欧米などがSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシア排除で合意
  • 2022年3月2日 国連総会緊急特別会合でロシア非難決議採択。賛成141、反対5、棄権35
  • 2022年3月11日 米国がロシアの貿易面の「最恵国待遇」撤廃を表明、日欧も追随
  • 2022年3月24日 G7首脳会議、国連総会緊急特別会合でロシア非難決議を再び採択
  • 2022年4月2日 ウクライナ側がキエフ州全域が「解放された」と表明
  • 2022年4月5日 EUが石炭の輸入禁止などの追加制裁の方針を表明
  • 2022年4月6日 米国がロシア最大手銀行などへの追加制裁を発表
  • 2022年4月6日 G7が石炭の輸入禁止を含む制裁を進める首脳声明を発表
  • 2022年4月7日 国連総会がロシアの人権理事会理事国の資格停止決議を採択
  • 2022年4月8日 岸田文雄首相が石炭の段階的な輸入禁止などの追加制裁を表明
  • 2022年4月14日 国際刑事裁判所(ICC)がこの日までにブチャとボロジャンカを訪問
  • 2022年5月4日 EUがロシアへの追加制裁として、ロシア産石油の輸入を禁止する方針を表明
  • 2022年5月17日 国際刑事裁判所(ICC)が法医学の専門家ら42人を現地に派遣と発表
  • 2022年5月18日 フィンランドとスウェーデン、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請
  • 2022年5月20日 ロシア国防省がマリウポリを完全に制圧したと宣言
  • 2022年5月21日 バイデン大統領がウクライナ支援で総額400億ドルの追加予算案に署名
  • 2022年5月25日 ロシア議会、軍の志願兵の年齢制限を撤廃する法案を可決
  • 2022年5月28日 ロシア側、ウクライナ東部の要衝リマンを制圧したと発表
  • 2022年6月29日 NATOはフィンランドとスウェーデンの加盟手続きを正式に開始
  • 2022年9月21日 プーチン大統領は30万人規模の予備役の招集を表明

国際機関の存在意義

ウクライナ侵攻に関しては、ほぼ、意味がないと言っても過言ではないでしょう。

国連安全保障理事会でロシア非難決議はロシアが拒否権を行使しました。

国連総会緊急特別会合でロシア非難決議採択されましたが、反対5、棄権35でした。

国連総会がロシアの人権理事会理事国の資格停止決議を採択しました。

国際刑事裁判所(ICC)がブチャとボロジャンカを訪問、専門家ら42人を現地に派遣しました。

結果、ウクライナ侵攻に対しては何ら影響を与えていません。

国際機関は単なる「場」であって、諸問題に対する影響力は無いのだと痛感します。

戦いはウクライナとロシアの間で決着しようとしています。

欧米諸国が行ったことは、ウクライナへの軍事支援や経済支援と、ロシアへの経済制裁のみです。

日本が台湾有事の当事者となる時、同じことが想定されます。

ロシア側の分析

プーチン大統領の政治目的

主に以下の3点が挙げられています。

  • NATOの東方拡大を阻止する(ウクライナをNATOに加盟させたくない
  • ウクライナのゼレンスキー政権を転覆させる(親ロ政権を樹立させたい
  • ウクライナはロシアの兄弟国家であるべき(ロシアの弟分であって欲しい

3つ目のロシアの兄弟国家については、プーチンの歴史認識に起因しています。

8世紀末〜13世紀においてウクライナとロシアはキエフ公国という1つの国家でした。

プーチンは同じ「ルーツを持つ国」という意識を強く持っています。

だから、ウクライナがEUに加盟したり、NATOに加盟するのは感情的にも「嫌」なのです。

核の使用はあるか

現時点(2022年10月14日)において、ロシアによる戦術核使用の可能性は十分にあります。

この先、戦術核が使用されるかどうかは、プーチン大統領にしか分かりません。

戦術核と戦略核の違い

そもそも、戦術核とは何でしょうか。

一応、かつて米ソで、そして現在も米露間で続いている核軍縮協定での定義によれば、「射程距離500km以下」というだけで、弾頭威力などは特に定義されていないため、極端な話をいえば、都市1つを丸々吹き飛ばすのみならず、地形を変えるほどの威力を持っても、その射程が小さければ戦術核、となります。

核兵器の現実的な運用は弾道ミサイルや巡航ミサイルによって行われるので、その射程さえ制限してしまえば必然的に小型のミサイルにしかならず、となれば弾頭運搬能力も限られて、威力も制限されます。

戦略核とは、ICBM(大陸間弾道弾)やSLBM(潜水艦用弾道弾)に核弾頭を載せて、命令ひとつで敵国そのものに致命的な打撃を一撃で与えうるものを言います。

今回、プーチンが使うかもしれないと言われているのは戦術核です。

ウクライナ側の分析

悪いのはロシアで、ウクライナは完全に被害者です。

始まりは2014年のロシアによるクリミア併合です。

戦闘はすでに2014年から続いていた

ウクライナでは2014年に政変が起きて、親ロ政権が倒れました。

危機感を抱いたロシアのプーチン大統領は、ロシア系住民が多いクリミアを占領し、さらにウクライナ東部ドンバス地域を実質的に支配しました。

この地域では2022年に至るまで、親ロ派の武装組織とウクライナ側との戦闘が続いてきたのです。

ゼレンスキー大統領は、有事の大統領としては最高

「われわれはここにいる。国を守る」

ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は26日、首都キエフの大統領府の外で撮影した動画メッセージを公開しました。

あくまで首都にとどまり、ロシア軍と戦い続けると強調しました。

ゼレンスキー大統領の首都キエフに残り最後まで戦うという決意は、ウクライナ国民を勇気づけました。

勇敢なウクライナ国民

ウクライナの男性は家族を国外へ逃した後、「自分は戦う」と言ってウクライナ国内へ帰っていったそうです。

そんな勇敢なウクライナ国民の姿を見て国際世論は動かされました。

スターリンクでインターネット通信

イーロン・マスク氏の率いる米宇宙開発企業スペースXは人工衛星に基づくインターネット接続サービス「スターリンク」を展開していました。

ウクライナ侵攻直後、イーロン・マスク氏は「スターリンク」をウクライナに対して無償で提供を開始しました。

そのおかげで、ロシアによる侵攻後もウクライナ市民やウクライナ軍はインターネット環境を利用できています。

SNSでロシア軍の残虐行為がアップロードされ、世界中に拡散されることで、国際世論のロシアへの批判は高まりました。

ウクライナの失敗

1991年のソ連崩壊後、ウクライナには大量の核兵器が残され、世界3位の核保有国となっていました。

しかし、当時、米露から核兵器を放棄するようにという、脅迫に限りなく近い非常に強い圧力がかかっていました。

もしこの要求に応じなければ、経済制裁や国際社会からの追放、最悪の場合は軍事行動という仕打ちが待っていたでしょう。

経済危機やハイパーインフレに苦しんでいたウクライナはこの圧力に抵抗する力がありませんでした。

そこで、当時のウクライナの指導者達は外国の要求をすべて呑み、無条件に3年間ですべての核兵器を放棄するという決断を下してしまったのです。

その見返りとして、「米英露はウクライナの領土的統一と国境の不可侵を保証する」という内容の議定書だけを発表しました。

実際の国際関係では国際条約ですら守られないことがありますが、この議定書も守られることはありませんでした。

ロシアはウクライナに侵攻して、米英にしても遠くから支援するだけで、直接の軍事介入はありませんでした。

国家同士の約束ほど、意味のないものはないですね。

アメリカ側の分析

この頃のアメリカ政府はジョー・バイデン大統領の民主党政権でした。

議会は左右に分断され、中間選挙は共和党に負けることが予想されており、内政はグダグダでした。

国内世論がウクライナ支援を後押し

ロシアのウクライナ侵攻直後は、遠い東欧での出来ことでしたので、アメリカ世論はウクライナ支援に消極的な印象でした。

しかし、ロシア軍の残虐行為がSNSなどで拡散され、ゼレンスキー大統領とウクライナ国民の勇敢な姿に動かされ、ウクライナに積極的に支援することに世論が傾きました。

日本人もウクライナに学んで、自らが立ち上がり血を流さなければ、誰も助けてくれない、ということを覚悟しましょう。

プーチンがブチ切れない程度の武器供与

ウクライナが勝ちすぎてもいけない。

これが軍事バランスの難しいところで、仮にウクライナが圧倒的に戦闘で勝ってしまうと、プーチンとしては核を使用するしかなくなってしまいます。

核の使用だけは避けなければいけません。

そのため、アメリカはプーチンがブチ切れない程度の支援に留めていたのです。

ロシア側の情報を傍受してウクライナに連携

アメリカ軍はロシア軍の動きを正確に把握していました。

ロシア軍(それもかなりの高官クラス)に内通者がいるとの噂もあります。

そうして得た情報を全てウクライナに連携して、ウクライナ軍は作戦を計画的に実行していました。

ある意味、アメリカがウクライナ軍を指揮していた、とも言えるでしょう。

台湾へのコミットが後回しになっている

キーワードは「ラスボスはチャイナ」です。

世は米中の覇権争いの時代です。

アメリカとしてはウクライナに資源を投下しすぎていて、対中国、つまりは台湾有事に備えて太平洋方面の軍備強化が後回しになっていました。

日本としては、ウクライナには申し訳ないのですが、中国が引き起こすかもしれない台湾有事の方が身に迫った危機です。

チャイナ側の分析

名実ともに大国となった中国は、堂々と中立を宣言します。

最初から一貫して中立

2月4日には中露首脳会談が行われ「4つの相互堅強支持コンセンサス」が改めて確認されました。

このコンセンサスは、国家主権等核心的利益を護る努力、国情に合わせた発展軌道、振興策、自国自身でウマくやること…、を双方それぞれ尊重して干渉しないよ、という内容です。

お互いがお互いのやってることを批判も賛同もしないことの確認です。

ウクライナ情勢に当てはめれば、わかりやすいかもしれません。

「軍事的平和解決は、国連体制に基づいた解決に委ねる」

チャイナはロシア軍が大規模に展開していることについて、このように言って、善悪の判断を名言していません。

LNG貿易の中抜き利益

ロシアのウクライナ侵攻の結果として「露から中」へLNGが流れています。

そして、チャイナから他国へLNGが流れていきますので、ロシアは今まで通り販売量を確保できて、チャイナは中抜き利益を得ることになります。

残念ながら、チャイナは非常に上手く立ち回っているのです。

国連を中心とした国際秩序を最も維持したいのはチャイナである

チャイナ(北京中央)が1971年に「中国の代表的地位」を奪取したアルバニア決議からちょうど50年間が経過しました。

これまでチャイナは「国連社会資本」へ莫大な資本を投資し続けてきました。

WHO(世界保健機関)を取り込んでいたからこそ、当初の武漢ウイルスという呼び名はかき消され、新型コロナウイルス(covid-19)と呼ばれるようになりました。

ある意味では国連機構のもとで、チャイナは外交的に確かな地位を築くに至っています。

当然、今後も維持したいと考えています。

しかし、最近では国連の機能不全が指摘されています。

国連安保理でロシアを非難する決議をしても、常任理事国のロシアが拒否権を行使するからです。(チャイナは棄権する)

ですから、チャイナはこの戦いの長期化は望んでいません。

現在の国際秩序を維持したいのは、実はチャイナなのです。

つまり、日本は今の国際秩序を少しでも崩すことが出来れば、チャイナに打撃を与えることが出来るという・・・

ヨーロッパ側の分析

ロシアによるウクライナ侵攻は、ヨーロッパ側との関係において、プーチンに「イケる!」と思わせてしまったがために起こってしまったという見方もできます。

理由は以下の2つです。

ドイツの責任

ドイツは天然ガスの輸入をロシアに58%も依存していました。

ノルドストリーム2という新たなガスパイプラインの建設も計画されていました。

これだけの量を頼っていては、ドイツは簡単にロシアの天然ガスから脱却できないことは自明です。

ロシアに「イケる!」と思わせてしまった要因の1つでしょう。

ちなみに、2022年7月27日にロシアがノルドストリームへのガス供給量を本来の20%まで減らしてしまいました。

結果、自然エネルギーと天然ガスに頼ったドイツは、電気代が600%も高騰してしまい、次の冬が越せないと言われています。

いい加減なエネルギー政策は国を亡ぼす良い事例となってしまいました。

NATOの拡大

北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)は「集団防衛」、「危機管理」及び「協調的安全保障」の三つを中核的任務としており、加盟国の領土及び国民を防衛することが最大の責務です。

1949年に設立された頃は16ヵ国でした。

1999年にはポーランド、チェコ、ハンガリーが加盟しました。

2002年にはリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国と、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアの計7ヵ国が加盟しました。

2009年にはアルバニア、クロアチアが加盟しました。

2017年にはモンテネグロが加盟しました。

2020年には北マケドニアが加盟しました。

おそらく、これが一番の理由でしょう。

西側諸国の軍事同盟はプーチンにとっては最大の脅威でした。

それがどんどん迫ってきていて、ウクライナまで加盟されてしまっては、NATOに接してしまいます。

それだけは絶対に許せないと考えたんでしょう。

日本側の分析

はるか東の島国である日本にとって、ウクライナは遠い国ですが、ロシアとは北方領土を介して国境を接しています。

岸田内閣の反応

国際会議の場ではロシアを強く非難する姿勢を見せました。

一方で、サハリン2は手放さない方針を取りました。

財務省が発表した統計によると、2022年8月に日本がロシアから輸入した液化天然ガス(LNG)の量は前年比で211%も増加しました。

また、ロシアからの輸入額は67.4%も増加し、1641億円に達しました。

これをどう評価するかは、もう少し後にならないと分からないでしょう。

自由主義陣営として戦う覚悟はあるか

日本にとって大事なことは、ロシアと接しているということです。

日本がウクライナに肩入れしすぎると、ロシアが日本にも攻めてくるという可能性もゼロではありません。

日本にとってラスボスはチャイナですが、ロシアとも戦うとなると、2正面作戦となってしまいかなり不利です。

この辺り、総合的に考えて国の舵取りをしなければなりません。

参考とした情報ソース